電子帳簿保存法の訂正・削除履歴の要件と残し方
電子帳簿保存法で「訂正・削除の履歴」が必要になる場面は2つあります。義務である電子取引データの保存では、履歴を残すのは4つの選択肢のうち1つ。もう1つの優良な電子帳簿では必須です。どちらに当てはまるか、国税庁の一問一答を引きながら切り分けます。
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「訂正・削除の履歴を残さないといけない」と聞いて調べ始めた方は、まずここを切り分けてください。電子帳簿保存法で履歴の話が出てくる場所は2つあり、一方は義務、もう一方は任意です。
義務なのは電子取引データの保存です。ただしそこでは、履歴を残すことは4つの選択肢のうちの1つにすぎません。履歴が必須になるのは、もう一方の「優良な電子帳簿」のほう。そしてこちらは、使いたい人だけが使う制度です。
履歴が出てくる2つの場所#
1. 電子取引データの保存(義務)#
メールで届いた請求書PDFや、サイトからダウンロードした領収書データの保存です。改ざん防止のための措置が必要で、施行規則第4条第1項に4つの方法が並んでいます。そのうちの第3号が「履歴が残るシステムを使う」というもの。つまり選択肢です。
2. 優良な電子帳簿(任意)#
仕訳帳や総勘定元帳を、施行規則第5条第4項第1号イの要件(訂正削除の履歴の確保、追加入力の履歴の確保)まで満たして保存すると、「優良な電子帳簿」になります。あらかじめ届出書を出しておけば、後から過少申告が判明したときに過少申告加算税が5%軽減されます。使わなくても違反ではありません。
紙で受け取った領収書をスキャンして画像で保存する「スキャナ保存」には、上の2つとはまた別の要件があります。この記事では扱いません。
電子取引データ:4つのうち1つを選べばよい#
国税庁の一問一答に載っている要件一覧では、改ざん防止措置は次の4つです。いずれか1つを行えば足ります。
- 第1号:タイムスタンプが付された後の授受
- 第2号:速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
- 第3号:データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用して、授受及び保存を行う
- 第4号:訂正削除の防止に関する事務処理規程を定め、備付け、運用する
2026年9月時点で最新は令和8年7月版です。一問一答は毎年改訂されるので、問番号を頼りに読むときは版を確認してください。
取引先ごとに違う措置を使っても構いません。保存場所を分けることも認められています。
国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問32(複数の改ざん防止措置が混在することは認められますか)出典(外部サイト)履歴を残さずに済ませる道:事務処理規程#
第4号を選べば、履歴の残るシステムは要りません。規程を作って、その通りに運用します。国税庁が参考資料としてサンプルを公開しているので、自分の事業に合わせて直すのが早いです。
国税庁 参考資料(各種規程等のサンプル)出典(外部サイト)規程の整備内容そのものは、一問一答の問33で説明されています。配偶者と2人で事業を営み、専用ソフトを使っていない個人事業主のケースは問19に回答があります。
国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問33・問19出典(外部サイト)注意したいのは、要件の文言が「定め、備付け、運用する」だと書かれている点です。作ってファイルに綴じただけでは足りません。データを訂正したり削除したりするとき、規程で決めた手順を毎回踏むことになります。担当者が自分1人なら回りますが、人が増えるほど守りきるのが難しくなる部分です。
システムの履歴で済ませる場合#
第3号を選ぶなら、使っているシステムに訂正・削除の記録が残るかどうかを確認します。どういうシステムなら要件を満たすのかは問39に、受け取った領収書データを訂正・削除の記録が残るシステムで保存していれば改ざん防止措置を講じていることになるかは問43に、それぞれ回答があります。
国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問39・問43出典(外部サイト)自社のソフトが要件を満たすか判断できないときは、国税庁が要件適合性の事前相談窓口を設けています。JIIMA認証を受けたソフトの一覧も公開されています。
国税庁 要件適合性に関する事前相談窓口出典(外部サイト)優良な電子帳簿の履歴は、会計ソフト側の話#
こちらは帳簿の話です。証憑を保管しているクラウドサービスに履歴が残っていても、仕訳帳や総勘定元帳が要件を満たすことにはなりません。判断の対象になるのは、帳簿を作っているソフトです。
履歴の残し方については、貸借の勘定科目を同一にして金額をマイナスで入力する訂正方法が認められるか(問26)、訂正削除の履歴を全て残せる必要があるか(問27)が整理されています。
国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】問26・問27出典(外部サイト)要件の全体像と対象になる帳簿は、国税庁の解説ページにまとまっています。
国税庁 優良な電子帳簿の要件出典(外部サイト)過少申告加算税の軽減措置は、あらかじめ届出書を提出していないと受けられません。要件を満たして保存していても、後から遡って適用することはできません。提出期限は一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】問43で確認してください。
自分がどちらに当てはまるか#
手順
受け取った書類を、データと紙に分ける
メール添付、Web からのダウンロード、チャット経由のファイル。これらがデータです。ここだけが義務の対象になります。
データのほうで、4つの措置のどれを使うか決める
タイムスタンプを買う予定がないなら、実質は第3号(履歴が残るシステム)か第4号(事務処理規程)の二択です。すでに証憑を保管するクラウドサービスを使っているなら第3号、使っていないなら第4号から検討します。
選んだ道を、形にする
第4号なら、国税庁のサンプルを直して規程を備え付け、訂正時の手順を決めます。第3号なら、そのサービスに訂正・削除の記録が残るかを確認します。
優良な電子帳簿は、会計ソフト側で別途考える
加算税の軽減を狙うかどうかの判断です。狙うなら、使っている会計ソフトが要件を満たすかを確認し、届出書の提出期限を押さえます。
BizCollect の場合#
第3号の道を選びたい場合の話です。BizCollect では、登録した受領証憑や帳票を訂正・削除すると、その履歴が保存されます。削除した場合も、アップロードした原本ファイル自体は残ります。電子帳簿保存法の「訂正又は削除の事実及び内容を確認することができること」に対応する仕組みです。
請求書や領収書はスマホで撮るか PDF をアップロードすれば、発行元・発行日・金額・消費税率・適格請求書発行事業者の登録番号までを AI-OCR が読み取ります。読み取り結果は保存前に画面で直せます。保存したデータは日付・金額・キーワードで絞り込めて、事業所の全データを CSV と原本 ZIP でいつでも書き出せます。
なお、紙で受け取った領収書をスキャンして原本を廃棄する「スキャナ保存」の要件を満たすかどうかは、別の論点です。BizCollect について確認が取れていないため、この記事では満たすとも満たさないとも書きません。
まずは、直近1か月に受け取った請求書と領収書を、データと紙で分けてみてください。データが数件しかないなら事務処理規程だけで終わりますし、毎月まとまった枚数が届くなら、履歴が残るサービスに寄せたほうが手数が減ります。