電子帳簿保存法、個人事業主は何をすれば足りるか
電子帳簿保存法の3つの制度のうち、個人事業主に義務があるのは電子取引データの保存だけです。紙の領収書のスキャンは任意。メールやWebで受け取った請求書・領収書をどう保存すれば要件を満たすのか、国税庁の資料をもとに最低限の手順を示します。
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個人事業主が電子帳簿保存法で必ずやらなければならないことは、ひとつだけです。メールやWebサイトで受け取った請求書・領収書を、紙に印刷するのではなく電子データのまま保存すること。これだけが義務です。
紙で受け取った領収書をスキャンして原本を捨てる、いわゆるスキャナ保存は任意の制度です。やらなくても違反にはなりません。
3つの制度のうち、義務は1つ#
電子帳簿保存法は、性格の違う3つの制度をまとめた法律です。ここを分けて理解すると、やることが一気に減ります。
- 電子帳簿等保存 — 会計ソフトで作った帳簿を電子のまま保存する。任意
- スキャナ保存 — 紙で受け取った領収書などをスキャンして保存する。任意
- 電子取引データ保存 — 電子でやり取りした取引情報を電子のまま保存する。義務
義務は3番目だけ。しかも令和3年度の税制改正で、出力した書面による保存の措置が廃止されました。印刷して紙のファイルに綴じる運用では、要件を満たしません。
国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)問1・問5出典(外部サイト)何が「電子取引」にあたるか#
判断の分かれ目は、受け取った経路です。中身が請求書か領収書かではありません。
電子取引にあたるもの
- メールに添付されたPDFの請求書・領収書
- 通販サイトやクラウドサービスの管理画面からダウンロードした領収書
- ネットバンキングの振込明細、クレジットカードのWeb明細
- 電子契約サービスで締結した契約書
あたらないもの
- 郵送で届いた紙の請求書
- 店頭で受け取った紙のレシート
紙で届いたものは、そのまま紙で保管しておけば足ります。電子でやり取りしたものだけを、電子のまま残す。この線引きが出発点です。
満たすべき要件は2つ#
電子取引データの保存には、真実性の確保と可視性の確保という2種類の要件があります。
真実性の確保#
次の4つのうち、いずれか1つを行います。
- タイムスタンプが付された後にデータを受け取る
- 受け取ったあと速やかにタイムスタンプを付す
- 訂正や削除の記録が残る、または訂正・削除ができないシステムで保存する
- 不当な訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する
個人事業主にとって現実的なのは3か4です。4の事務処理規程は、国税庁がサンプルを公開しています。事業者名と日付を入れて印刷し、手元に置いておくだけで要件を満たせます。費用はかかりません。
国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)問18・問33出典(外部サイト)可視性の確保#
ディスプレイとプリンタを備え、画面や書面にすぐ出せる状態にしておくこと。そして、取引年月日・取引金額・取引先の3項目でデータを検索できること。
この検索機能が、対応をいちばん重く見せている部分です。しかし個人事業主の多くには、そもそも必要ありません。
検索機能が要らなくなる条件#
次のどちらかにあてはまり、かつ税務調査でデータのダウンロードの求めに応じられるなら、検索機能の確保は不要です。
- 電子取引が行われた日の属する年の前々年の1月1日から12月31日までの売上高が5,000万円以下であること
- 電子取引データを出力した書面を、日付および取引先ごとに整理して提示・提出できること
前々年の売上高が5,000万円以下であれば、フォルダに入れておくだけで検索要件はクリアします。個人事業主の大半はここに収まります。
国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)問51・問52出典(外部サイト)検索機能が不要になっても、「ダウンロードの求めに応じられること」は残ります。データそのものを税務職員に渡せる状態、という意味です。印刷した紙しか手元にない状態はここに含まれません。
最低限の手順#
前々年の売上高が5,000万円以下の個人事業主が、今日から始める場合の手順です。
手順
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保存場所を1つ決める
パソコンのフォルダでも、クラウドストレージでも、専用のサービスでも構いません。大事なのは、場所を1か所に決めて分散させないことです。年ごとにフォルダを分けておくと、あとで探しやすくなります。
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事務処理規程を作る
訂正・削除の記録が残るシステムを使っていない場合は、これが真実性の確保の手段になります。国税庁のサンプルに事業者名を入れて、印刷して保管します。作業は10分ほどで終わります。
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ファイル名を「日付_取引先_金額」で統一する
国税庁は
20210131_㈱霞商店_110000という形式を例に挙げています。検索要件が不要な事業者でも、この形にしておくと自分が探すときに困りません。索引簿を作る方法も認められています。 -
受け取ったその場で入れる
後でまとめてやろうとすると、まず溜まります。メールで請求書が届いたら、その場でフォルダに保存する。習慣にできるかどうかが、実務としては最大の分かれ目です。
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年末に一度、抜けを確認する
サブスクリプションの利用料など、Web明細で毎月発生しているものが漏れやすい箇所です。カードの明細と突き合わせて確認します。
間に合わないときの猶予措置#
要件どおりに保存できないことについて所轄税務署長が相当の理由があると認める場合は、保存時の要件にかかわらず、電子データをそのまま保存しておけばよいことになっています。事前の申請は不要です。
このとき必要なのは次の2つです。
- 電子取引データのダウンロードの求めに応じられること
- 電子取引データを出力した書面の提示・提出の求めに応じられること
「相当の理由」には、人手不足、システムの整備が間に合わない、資金不足といった事情が挙げられています。
猶予措置は、紙に印刷して保存する運用に戻ってよいという意味ではありません。電子データそのものの保存に代えて、出力した書面で保存することは認められていません。データは残したうえで、要件の一部が満たせない状態を許容する措置です。
BizCollect の場合#
BizCollect では、メールやWebで受け取った請求書・領収書のPDFや画像をアップロードして保存できます。AI-OCRが発行元・発行日・金額・消費税率・適格請求書発行事業者の登録番号を読み取るので、あとから取引先や金額で絞り込めます。読み取り結果は保存前に画面上で確認・修正できます。
保存したデータの訂正・削除の履歴は自動で残ります。これは真実性の確保の3番目、「訂正や削除の記録が残るシステムで保存する」にあたる仕組みです。削除しても原本のファイルは残ります。
保存したデータは、CSVと原本のZIPとしていつでも一括で書き出せます。ダウンロードの求めに応じる場面や、税理士に資料を渡す場面で使えます。
なお、紙で受け取った領収書をスキャンして原本を破棄してよいかは、この記事で扱った電子取引データ保存とは別の「スキャナ保存」の要件の話です。要件が異なるため、電子取引データの保存ができることをもって紙の原本を捨ててよいことにはなりません。
まずは、直近3か月に届いた請求書メールを見返して、電子で受け取ったものがいくつあるかを数えてみてください。そこが対応すべき範囲のすべてです。